「仕事がしんどい、逃げ出したい」そんな時、ふと頭をよぎる「結婚して、専業主婦になっちゃおうかな……」という選択肢。

 

でも、本当にその選択をして、あなたが送りたい“理想の生活”は手に入るのでしょうか?

 

今回は、それを検証すべく、年収1000万円の男性と結婚して専業主婦になった場合、あなたがどんな生活を送ることになるのか、ファイナンシャル・プランナーの中村芳子(なかむら・よしこ)さんにシミュレーションしていただきました。

 

 

1

 

 

 

住まいは八王子のファミリーマンション

 
中村芳子さん:世間ではよく理想の結婚相手として「年収1000万円の男性」が挙げられますよね。

 

でも、私には不思議でならないんです。

 

どうして仕事もできて頭もいい女性がそういう条件を結婚相手に求めるのか……。

 

というのは?

 

 

中村:みなさん、何か勘違いしていらっしゃるのではないかと感じるんです。

 

では、逆に聞きますが、年収1000万円の男性と結婚して専業主婦になったら、どんな生活を送ることになると考えているんですか?

 

えーっと。とりあえず、住まいは港区、もしくは世田谷区のファミリーマンション。

 

子どもは2歳違いで2人いて、できればお受験をさせて私立に通わせたり。

 

あとは1年に1回くらいは海外旅行ができるかなあ、と。

 

中村:えーっ、それ、本気でおっしゃってるんですか?(笑)。

 

年収1000万円だと、手取りは約850万円ですから、買えてせいぜい5000万円のマンションです。

 

ちなみに港区にも世田谷区にも新築で5000万円台のファミリーマンションなんかありません*。

 

5000万円で買える新築ファミリーマンションは八王子くらいまで行かないとないですね。

 

23区内には住めないんですね……。

 

*取材後に調べたところ、世田谷区の新築ファミリーマンションの相場は65平米で約6200万円でした。

 
また港区の中古マンションで5000万円の物件を調べてみたところ、間取りは広くて2LDK(平均的に約50平米前後)でした。

 

 

2

 

 

ランチは月に一度で3000円まで

 
中村:現実が少しはわかりました?

 

はい……。では、八王子のファミリーマンションで2歳違いの子ども2人と家族4人で暮らし始めたとして、専業主婦になった私はどんな生活を送ることになるのでしょうか?

 

中村:おそらく、朝から晩まで子どもと3人きりの生活です。

 

業種にもよりますが、この年収帯の人は仕事が超多忙で日付の変わる頃にギリギリ帰ってこられるかどうか。

 

あなたは仕事を辞めていますから、子どもを保育園に預けられません。

 

都心から八王子に引っ越したので親しい友人も近くにいません。

 

となると、少なくとも平日は朝から晩まで子どもと3人きりで過ごすことになります。

 

子どもが小さいうちは、スーパーに買い物に行くのも一苦労ですよ。

 

ママ友とレストランの個室で優雅にランチなんて、夢のまた夢……なんですね。

 

中村:別に子どもといつも一緒の生活が好きなら、問題ありません。

 

でも、10年以上バリバリ仕事をしてきた女性が、はたしてその生活に耐えられるでしょうか?

 

まあ、SNSで友人とつながることはできるでしょう。

 

 

でも子どもと料理の写真ばかりアップしていたら、働く友人からもらえる「いいね!」は義理だと思ってください。

 

子どもが幼稚園に上がったら、友人とひと月に一度くらいはランチできると思いますよ。

 

でも、「銀座で5000円の天ぷらにしましょ」なんて言われたら断るしかないでしょうね。

 

頑張って出せて3000円まででしょう。

 

3000円のランチでも躊躇するくらいなのか……。

 

今は毎日ランチに1000円くらい普通に使ってるし、たまには3000円でコースもいいかな、って感じなのに。

 

すごい落差。

 

中村:面白いことに、バリバリ仕事をしてきちんと稼いできた女性ほど「夫のお金」を使うことに罪悪感を覚えるものなんです。

 

専業主婦が比較的多い地方都市だと、「夫のお金は私のお金」と考える女性が大半ですが、キャリアのある女性が専業主婦になると、「夫のお金」を自分の趣味や嗜好品に使うことに抵抗を感じます。

 

結果、化粧品や服は会社員時代に貯めた貯金を引き出して買う女性も結構いるみたいですよ。

 

でも、やがてその貯金も底をついてしまいますし。

 

せつない……。

 

でも、確かに今、自分のお金でこれだけ好きなものを買う生活をしてたら、今さら人に養ってもらうとか無理かも……。

 

 

3

 

 

 

子どもの教育や海外旅行は?

 
だいぶイヤな予感がしてきましたが、子どもの教育費とか、どうなるんでしょうか?

 

中村:子どもを私立の学校(中学・高校)に入れると、公立の学校と比べて一人当たり年間約100万円は余分にかかります。

 

しかも2歳違いだと、中高6年間のうち4年間は時期が重なりますよね。

 

その期間は夫の収入だけでは確実に赤字です。

 

現実的には、自分がパートに出て年間100万円ほど稼いで教育費に充てるという策をとることになるでしょうね。

 

ついでに言えば、幼稚園や小学校から私立に入れるのは、まず無理です。

 

諦めてください。

 

もし、入れてしまった場合、大学の費用を貯金できなくなります。

 

もう、ここまできたらダメもとで聞きます。家族4人で海外旅行に行けますか?

 

中村:行けますよ。

 

えっ、行けるんですか!?

 

中村:すっごく節約したら5年に1回くらいね。

 

ご、5年に1回……。年に1回じゃないんですね。

 

中村:お金の使い方や予算の組み方にもよりますが、ハワイの格安ツアーでも1人20万円くらいかかりますから、4人だと80万円。子どもが半額だとしても60万円。

 

プラス、食事代やおみやげ代など細々したものを入れると、70、80万円にはなりますね。

 

ですから、うんと節約して5年に1回行ければいい方です。

 

 

“現実”を知らないまま選択しないで

 
「仕事がしんどいから、専業主婦にでもなろうかな」と考えていた自分は、甘かったです……。

 

ちなみに、冒頭で私が口にした理想、つまり「港区もしくは世田谷区在住で、年に1度は家族旅行に行きたい」というようなライフスタイルは、夫の年収がどのくらいあれば実現可能なんでしょうか?

 

中村:最低2000万円から3000万円はないと無理でしょうね。

 

でも、ね、仮にそういう高収入の男性と結婚できて専業主婦になれたとして、あなたは幸せになれるのかしら?

 

……(沈黙)。

 

中村:私は別に「専業主婦になるな」と言っているわけではありません。

 

ただ、なるなら、“現実”をきちんと理解した上で選択してほしいのです。

 

“現実”を知らないまま、「仕事がしんどくて逃げ出したいから」「見てると、なんだか楽しそうだから」という漠然とした理由で、その道に進んで、あとから「こんなはずじゃなかった」と後悔するのだけは、絶対に避けてほしい。

 

今は世の中の変化のスピードが速いですから、2、3年でも労働市場から離れてしまうと、たちまち自分がかつて働いていた世界から取り残されてしまいます。

 

復職しようにもできないし、以前の友人や同僚とも話が合わなくなって孤独に……。

 

仕事に未練がないならいいですが、みなさん、本当にそこまでの覚悟はありますか?

 

「仕事がしんどいから……」と逃げ出したくなることがあるのなら、一度自分に問いかけてみてくださいね。

 

逃げていった先が、「もっとしんどい」ということは人生、よくあることですから。

 

別に正社員としてフルタイムでバリバリ働くだけが仕事のやり方ではありません。

 

多少お給料は下がっても心地よく働ける職場に転職するのもあり、一時的に契約社員になってギアチェンジしたり、フリーランスに転身してもいいでしょう。

 

結婚や出産でいったん退職する場合も、復職プランをつくっておきたいですね。

 

「働き続ける方法」を最後まで探っていただきたいと思います。

 

 

(ウートピ編集部)